chapter8
ノックをしても返事がないので、とりあえずドアを引っ張ってみることにした。
開いた。
まぁ、一応探偵事務所だし鍵はかけてないのは普通。別段驚くところは存在しない。
ノックしたんだから返事くらい返してくれても良いと思うんだけどもねぇ。
「失礼します」
一応一言言ってから中に入る。
事務所内はまだ電気がついていなかったため、薄暗かった。
入り口からすぐそばに応接セットが置かれている。その奥には大きい事務机と回転椅子。
大石さんは回転椅子に座っていて、窓の方を向いていた。自然、僕に背を向けることになる。
「ああ、お前か」
大石さんが、こちらを振り向いて言った。
「何か用か?」
「あぁ、いえ、何というか……」
「あぁ、すまない。電気つけてくれないか」
「いいですけど……、どこです?」
「そこ」
そう言って大石さんが指差したところに、電気のスイッチがあった。
カチリ、と。
無機質な音が部屋に響いた。
部屋が明るくなる。
いきなり。
「……お前っ!!」
大石さんがこちらに飛び掛ってきた。
僕は驚いて後ろに下がるものの、飛び掛ってきた大石さんによって押し倒され、バランスを崩してそのまま床に倒れこんでしまう。
「悪魔と契約したのかっ!」
ものすごい力で紋様が書かれた腕をひねり上げられる。
しまった……、さっき顔を洗った時に袖をまくったまま元に戻してなかった……。
たかが夢とはいえリリスに忠告を受けたばっかりだというにもかかわらず、迂闊。
「おい、聞いているのかっ!」
「ああああ、はいはいそうです契約しました」
やべぇ、かなり怖いんですけどっ!
「よりにもよって……!」
顔面に衝撃が走る。
殴られたということに気づくまで、数秒。
大石さんは深い深いため息をつくと、僕を解放してくれた。
僕は、ゆっくりと起き上がる。
「能力は、発現したのか」
「あぁ、まあそのようです。先ほど激しい頭痛と吐き気に襲われまして」
「どういった能力なんだ?」
「いや、まだわかりません」
大石さんは、ふむ、と軽く頷いた。
「しばらく様子を見させる」
「……はい?」
「大丈夫、監視カメラとかそういう物騒なもので様子を見るつもりはない」
じゃあどうやって俺の様子をみるんだ。
「私の使い魔と一緒に暮らしてもらおう」
僕は開いた口が塞がらなかった。
「それこそ物騒じゃないですか、大石さんの何されるかわかったもんじゃない」
「どういう意味だ?」
ギロリ。
うっ。
「まぁ、とりあえず飯でも作るから食ってけ。今日は決戦だ」
「決戦……?」
「そう。こないだ言った巨人がついに動き出すらしい。琴葉が言ったから間違いない。それにこのまま能力がどうなるかわからないお前を一人にしておくのも危険だからな」
いや、巨人との戦いに行く方が命に関わると思うんですけど。
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